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理恵の日記

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みすずに寄せて
2018/10/14(Sun)

いつからか、見ていた夢があった。それは、金子みすゞ記念館へ行くことだ。
みすゞが私の中でどういう存在なのかは、はっきりとはわからない。母が好きなふりをしていたので、私も好きなふりをしていただけのようにも思える。でも、私は漠然と金子みすゞという人物を知りたいという気持ちがあり、小学生の頃、図書室の「入れてもらいたい本」「図書リクエスト」に「金子みすゞの伝記」と存在しない本をリクエストした。

実家に、一冊の詩集があった。紫の表紙に、一羽の小鳥。その上に、「私と小鳥とすずと」とタイトルが書かれていた。
ある日、市立図書館で偶然同じような表紙の色違いを見つけた。オレンジの表紙には「あかるいほうへ」緑の表紙には「この道をゆこうよ」。これが3冊セットなのを初めて知った。うちの残りの二冊はどこへ行ったのか? という気持ちを抱いた。

何年かして、珍しく金子みすゞを取り上げた番組が放映された。みすゞの人生を描いた二時間ドラマだ。あの時はなぜ急に、という思いもあったが、今考えたら生誕100年にあたる年だったのではないかと思う。

それより不思議だったのは、伝記さえ存在しない人物の人生は、描くことができるのかということだった。

それもかなり昔のことで、強く印象に残っているのはみすゞ役だった松たか子が舟の上で綺麗に笑いながら「大漁」を読むシーンと、
みすゞの死を受けて弟役だった三宅健が号泣するところだ。

あの時みすゞの最大の理解者として描かれた弟と、自ら死を選ぶほど愛された娘は、その後どう過ごしたのか。みすゞの人生はわかったが、新たな疑問が生まれた。

そのシーンを忘れられないまま、大学生になった。なんの前触れもなくなのか、何かに触発されてなのか忘れたが、ある日ふと、「もしかして金子みすゞにも記念館があるのでは?」と思い検索した。

あった。さらに、あの詩集はみすゞの詩に感銘を受けた初代館長が激撰した詩集だともわかった。

ここへ行きたい。そう思うようになった。

そして今日、何年の時を経てかは忘れたが、金子みすゞ記念館を訪れた。「あの詩集を3冊揃える」という目標を持って。

ここで、今まで画面の中だったみすゞの人生に触れ、弟や娘についても知ることができた。弟さんも多才な方だったようで、少し驚いた。

で、あの詩集をレジに持っていくと、それより別の3冊を薦められた。それは、金子みすゞが書き留めた詩を、書いた順に掲載した3冊なのだという。

正直、あの3冊を揃えたいという思いがあり、迷ってしまった。

でも、あの紫の表紙はもう帰らないであろう実家。私は親を良く思っていない。先に「母は好きなふりをしていた」と言ったが、それは私の主観である。彼女は言うほどみすゞが好きだと口には出さないし、他にも岩崎ちひろなど、趣味は綺麗だ。しかし、家族に「死ね」は当たり前だし、軒並み私には「お前は人間じゃない」と毎日のように言っていた。現実の、特に家族に対する態度はとても綺麗ではなかった。だから、私は彼女は綺麗なものが好きな自分が好きなのではないかと思っている。

そんな母のもとにある一冊の詩集。自分の手元にあるならまだしも、母の手元にあるなら、正直、無理に集める必要はない。昔からの夢だったから残念な気持ちもあるけど、もう母とは違う人生を歩んでいるという気持ちの表れも兼ねて、おすすめして頂いた3冊を買った。

正直、母からの暴言に疲れ果てて廃人のように過ごしていた時期もあり、本当にこの場所を訪れる日が来るとは思わなかった。でも、これが後に何かを残すような気がしていた。だから決行した。

もうすぐ、金子みすゞをめぐる旅は終わる。その前に、これを書き記したかった。
ただ、詩人には詩で返すのが礼儀だとも思った。だから、「みすずに寄せて」を書いたのだ。

理恵

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