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YOASOBI小説集
2020/09/28(Mon) YOASOBIは昨年結成、今年デビューした「小説を音楽にするユニット」をコンセプトに活動するアーティストだ。 9/18㈮、その元となった小説を集めた短編集が刊行された。 この短編集、実は素人が書いたものである。もちろん編集はプロだが。 言わば、YOASOBIが歌うことも含め、メディアミクスされることを前提に募集されたウェブ小説なのである。 なので、正直文章力には期待しない方がいい。 ただ、何が審査員を惹きつけたかを考えると面白いかもしれない。 ネットで意思表示が容易になった昨今、評論家気取りの素人が散見される。私もその一人ではあるが。 まあ、この本は、そうした評論家気取りにボロクソ言われるだろうなというのが正直な感想である。 多分、『タナトスの誘惑』『夜に溶ける』は明らかに発想力だろう。そして、単に小説として評価するなら発想力だけを褒めるべきなのだろうが、この企画には「音楽にする」というイベントが付きまとう。 これを歌にするなら間違いなく自殺を題材に歌わなければならないのだが、よく歌う気になったなと思った。 これが元の楽曲『夜に駆ける』は「君は初めて笑った」が何とも皮肉的で、今まで主人公が「君」の笑顔のために奔走していたのに、最後には「君」に主導権が移っている。 それを不思議に思っていたのだが、小説もまさにそう。いや、もしかしたら最初から「君」にあったものが、クライマックスで露呈しただけかもしれない。 YOASOBIの楽曲は『夜に駆ける』『ハルジオン』以外は聴いていないのだが、残念ながら今回は『ハルジオン』の原作は収録されていない模様。 なので、この短編集に収録されている話が元の楽曲は『夜に駆ける』しか聴いていないことになる。 これ以降は、単純に物語の感想として書いていく。 『あの夢をなぞって』の原作『夢の雫と星の花』は最初はそんなに文章力は感じなかったが、主人公が花火師を訪ねるところから文章力が上がったように感じた。ただ、それは読んだ日が違ったから、私の心持ちが変わったのかもしれない。 花火の描写が綺麗で、また、花火を作る過程にもやけに強いものを感じて、作者自身花火に思い入れがあるのかな?と思った。 『たぶん』はもう少し物音の犯人を探る描写が多いと短編として面白いのでは?と思った。『たぶん』というタイトルの意味合いも増してくると思う。YOASOBIのヴォーカルのikuraが「主人公がずっと目を瞑っているところが面白い」と言っていたが、そう、そこ!そこがこの小説の唯一無二の味なのだから、そこをもっと広げてほしかった。そうするとかなりちっぽけな世界の話になるが、短編だから描ける世界だとも思う。 『未発表曲』の原作……ということだが、10/1になにやら発表があるようなので、恐らくコレ絡みだろうと思ってる短編『世界の終わりと、さよならのうた』 美しい話だと思う。世界の終わりの日に出会った二人が、忘れかけた音楽を奏でる話。 私は音楽人ではないが、音楽人が読んで何を感じるか、聴いてみたい。 これを「骨」にした楽曲、楽しみだ。 また、最後にはYOASOBIの二人によるインタビューも載っている。先にも書いたが、この短編集には「音楽にする」というイベントが付きまとう。それ込みの評価であるから、小説と音楽、両方を楽しめる人に読んでほしい一冊である。 理恵
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